人間の暗闇―ナチ絶滅収容所長との対話(3)

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#これもまたテーマとは関係なく、実家のヒマラヤユキノシタ。FinePix F31fdで撮影

以下、特に断りのない限り、引用は
人間の暗闇―ナチ絶滅収容所長との対話」から行っている。

ユダヤ人虐殺は、当のドイツ人の間ですら、犯罪行為と認識されていたのが、(戦後のインタビューとはいえ)当書に記されている。
シュタングルが彼にとって最初の絶滅収容所勤務であった、ソビボールに妻子が来たころ、たまたま同収容所勤務の親衛隊員、カール・ルードヴィヒがシュタングル夫人とあって話すくだり。

「とにかく話が長くて酒臭かったので、私はだんだん我慢できなくなりました。
でも、そのうち泣き始めたので、きっとこの人も寂しいんだろうと思って、せめて話くらい聞いてやろうと思い直しました。
すると、彼は突然言い始めたのです。『ひでぇもんだーまったくひでぇもんだ!あれがどんなにひどいか、分かりますか?』
私は彼に、いったい何がひどいの?と尋ねました。すると『何も知らないんですか?』と聞かれたので、私は『知りませんよ、何の話?』
と尋ねました。『ユダヤ人ですよ』と彼は答えました。『ユダヤ人が殺されているんです。』
『殺されている?いったいどんなふうに?』すると彼は『ガスですよ、ものすごい数の人が』と言ったんです。
それから彼は泣きながら事細かに説明してくれました。
『でも俺たちは総統の命令でやっているんだ、総統のために生贄を捧げているんだー俺たちは命令に従っているんだ。』
それから付け加えました。
『ユダヤ人たちがどんな目にあっているか想像できますか?』
それで私も耐えられなくなり、もう帰ってくれと頼みました。
私もその時は泣いていました。何も考えることができなくなって。
子供たちを家の中に入れ、その場にへたり込んで、まるで地獄の淵を見ているかのような心境になりました。
夫が、愛する人が、そんな仕事をしているなんて、何故彼がそんな仕事をする羽目になったのか?
そんな仕事に彼が耐えられるのか?」


カール・ルードヴィヒは、トレブリンカ収容所の生き残りのユダヤ人、ジョー・シェドレツキに
「今でも、また会ってみたいドイツ人もいるよ。親衛隊員だったカール・ルードヴィヒだ。彼は善人だった。
彼は私だけではなく、多くの人々に救いの手を差し伸べた。とても信じちゃもらえないだろうが。
今、どこにいるのか知らないが、彼のためなら証言してもいいよ。」

と評される人だから、とても耐えられなかったのだろう。
「証言してもいいよ。」とは「もし裁判があるなら、弁護側証人として、擁護の証言をしてもいいよ。」
だろうけど、カール・ルードヴィヒその人は、行方不明である。

この殺人作業が知られたことにより、シュタングル夫妻の間は若干ギクシャクしたものになる。
夫人がシュタングルと口を利かなかったり、絡んだりする記述も書かれている。
ギッタ・セレニーが書く以下の記述を納得させるケースではある。
 何百人もの人間、男性、女性、子供を殺害するために、ナチスは単なる肉体的な死ばかりではなく、精神的な死と社会的な死を与えた。
 それは単に、犠牲者だけではない。
 殺人を行った加害者に対しても、また、それを知っていた傍観者に対しても。
 そして、さらにーある程度までー当時考えたり感じたりすることのできたすべての人間に対して。

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by rshingen | 2009-05-09 00:50 | その他全般
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